2017年8月20日日曜日

『エル ELLE』(Elle)

『エル ELLE』(原題:Elle)

 ミシェル(イザベル・ユペール)は、新鋭ゲーム会社の社長として君臨、ひとり息子も成人し、裕福なひとり暮らしを謳歌していた。ある日、自宅に覆面の男が侵入し、レイプされてしまう。

© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS–
 TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION –
 FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP

 警察への届け出をすすめる別れた夫や友人たち。しかし彼女はそれを拒み、自らの力で身を守る術を探し始める。自分に恨みを持つ人物と言えば……同僚、部下、そして自分の父親が起こした過去のおぞましい事件の被害者たち。毅然とふるまうミシェルだが、心の中には止まった時計を持つ小さな子供がいて、しくしくと泣いているのが見える。東京・有楽町朝日ホールの『フランス映画祭2017』で本作が日本で特別上映された際、来日したイザベル・ユペールは「いちばん印象に残っているシーンは?」という会場からの質問にこうこたえた。「小鳥が死にそうなシーンです」と。殺人や暴力、裏切りが大胆に描かれるこの映画の中で、何の違和感のなく登場する何気ないシーン。小さな命を救おうと尽くすミシェルを知ると、人間の心がいかに複雑でいかに繊細かが伝わってくる。原作は『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』で知られるフィリップ・ディジャン。当初、ポール・ヴァーホーヴェン監督は、アメリカでの製作を考えていたが、多くの女優が主人公ミシェルを敬遠、キャスティングは難航していた。そんな中、イザベル・ユペールから「主人公を演じたい」という申し出があり、この作品は原作者のいるフランスへと里帰りすることになった。一歩踏み外すと、血の気の多いサスペンス映画とくくられてしまいがちなストーリー。それが、何層にも積み重ねられた人間ドラマとして完成したところにフランスの土の匂いを感じる。そして、ヴァーホーヴェン監督が第二次世界大戦後のオランダで育ったということも、書き加えておきたい。



© 2015 SBS PRODUCTIONS – SBS FILMS– TWENTY TWENTY VISION FILMPRODUKTION –
 FRANCE 2 CINÉMA – ENTRE CHIEN ET LOUP


原作: フィリップ・ディジャン
製作: サイド・ベン・サイド ミヒェル・メルクト
監督:ポール・ヴァーホーヴェン
脚本:デビッド・バーク
出演:イザベル・ユペール  ロラン・ラフィット  アンヌ・コンシニ  
   シャルル・ベルリング  ヴィルジニー・エフェラ  ジョナ・ブロケ ほか

2016/原題: Elle/フランス/ 131/PG12(映倫区分)

配給: GAGA
http://gaga.ne.jp/elle/


8月25日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー


<本ブログ内リンク>

(イザベル・ユペールさんのコメント)

フランス映画祭速報2『夜明けの祈りが始まる』
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2017/06/2017-les-innocentes.html



(イザベル・ユペールさん主演映画)

『アスファルト』その1(原題:Asphalte)

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