2017年12月4日月曜日

『ルージュの手紙』(Sage femme)

 マルタン・プロヴォ監督は、第30回東京映画祭の審査委員として来日したばかり。
「映画とは何か?」との質問に対して、「私にとって、映画とは”目覚め"」と輪郭のはっきりした言葉で答える姿が印象的でした。
  十代の頃に出会ったイングマール・ベルイマン監督の作品"CREIS AND WHISPERS" (邦題:『叫びとささやき』)に、何かから目覚めさせられるような深い感銘を受けたのだそうです。
  少年の頃の感動を今でも大切にするプロヴォ監督が最新作の主人公の職業に選んだのが、「助産師」です。

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『ルージュの手紙』(Sage femme)

© CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA


  助産師として、1人息子の母として、堅実な人生を歩むクレール(カトリーヌ・フロ)。酒とギャンブルが好きで奔放に生きるベアトリス(カトリーヌ・ドヌーヴ)。正反対の2人が、30年ぶりに再会する。かつて自分の父を愛したベアトリスは、あるとき、こつ然と自分たちの前から姿を消した。新しい母親ができた喜びから、とたんにどん底に突き落とされたクレールは、赦しを乞うベアトリスを受け入れることができるだろうか……21世紀のパリ郊外を舞台に2人の大女優(どちらもカトリーヌ!)が演じるこの映画は、まるで「アリとキリギリス」のよう。カトリーヌ・フロの演技が映画にリアルな厚みを加え、カトリーヌ・ドヌーヴの存在感がきらきらとした彩りを加えている。人の命の誕生に関わるという大仕事でありながら、脚光を浴びる機会のきわめて少ないSafe femme=助産師。マルタン・プロヴォ監督にとって、助産師は文字通り、命を与えてくれた人だった。彼が命の危険を伴って生まれたとき、担当の助産師は自らの血を輸血して新生児の命を救ったという。大人になってそのことを知り、助産師を探しに行ったが、命の恩人との再会は叶わず、プロヴォ監督は、助産師への感謝の思いをこの映画に込めた。多くの助産師を取材して完成した脚本には、思わず涙がこぼれそうになる出産シーンがある。そして、それと対比するように描かれる賭博のシーンもまた、臨場感に溢れる。本物の助産師、本物の賭博師に囲まれながら役を演じ切った2人の女優と、それを映画におさめた監督の情熱。観ているうちにきっと胸が熱くなってくると思う。


© CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA
                                            

監督・脚本: マルタン・プロヴォ
出演: カトリーヌ・フロ  カトリーヌ・ドヌーヴ  オリヴィエ・グルメ
      カンタン・ドルメール  ミレーヌ・ドモンジョ  ほか

2017 年/フランス/117 /
http://rouge-letter.com

提供・配給:キノフィルムズ

<本ブログ内リンク>
カトリーヌ・ドヌーヴが判事役として出演した映画
『太陽のめざめ』
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/07/la-tete-haute.html

<公式サイト>
ルージュの手紙
http://rouge-letter.com


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