2018年10月11日木曜日

魂で見る、魂で聞くということ……『ヴァンサンへの手紙』と『エンジェル、見えない恋人』

10月13日(土)から公開が始まる、2本の映画を紹介します。
かつて『星の王子さま』を夢中で読んだ経験のある人には、ぜひ観てほしい映画です。

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魂で見る、魂で聞くということ

『ヴァンサンへの手紙』(原題:J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd


(C)Kaléo Films

「魂で聴けるなら、聞こえなくて何の問題がある?」
  ろう者のコミュニティに招かれたとき、ヴィクトル・ユゴーが残した言葉だ。映画の中盤でこの言葉に出会い、はっとした。
「聞く」とはどういうことなのか?話を聞き流すだけで、話し手を理解する姿勢なければ、聞くことに何の意味があるだろうか。自己を否定され、深い孤独を知っているろう者の方が、もしかすると聴者よりも人の心を理解する力があるのではないかと感じる。
『ヴァンサンの手紙』を撮影したレティシア・カートン監督は、聴者の立場。しかし、原題の”J'avancerai vers toi avec les yeux d'un sourd”(ろう者の視点であなたに寄り添う)という言葉の通り、ろう者へのまなざしをそらすことなく、本作を撮り上げた。青い空と光り輝く雲を映し出すシーンが美しい。


(C)Kaléo Films

          10月13日(土)よりアップリンク渋谷ほか全国順次公開



『エンジェル、見えない恋人』(原題:Mon ange



©2016 Mon Ange, All Rights Reserved.



  盲目の少女マドレーヌと、無色透明のエンジェルの恋物語。誰の目にも映らないエンジェルの存在は、この社会で「存在しない」に等しい。でも、目の見えないマドレーヌだけは、彼の存在を匂いや感触で感じ取ることができた。手術によって視力を得たマドレーヌは、「見る」という行為が、自分が想像していたものをは違うと気づく。映画の始まりと終わりに流れる曲”All the Way”の歌詞の意味を知ると、さらに切なくなる。



©2016 Mon Ange, All Rights Reserved.
      10月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野ほか全国順次公開


ドキュメンタリーとファンタジー、真逆なジャンルでありながら、この2作品が放つオーラはよく似ている。目が見えないこと、耳が聞こえないこと—— それはもしかすると、魂で見聞きするというチャンスを得ることなのかもしれない。

<本ブログ内リンク>

女性監督による心あたたまるドキュメンタリー映画はここにも。
『子どもが教えてくれたこと』( Et les mistrals gagnants

<公式サイト>

『ヴァンサンへの手紙』 (J’avancerai vers toi avec les yeux d’un sourd

『エンジェル、見えない恋人』 (Mon ange

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