2023年6月21日水曜日

『アシスタント』(原題:The Assistant)

 『アシスタント』(原題 : The Assistant

監督・脚本・製作・共同編集:キティ・グリーン

 

差別が当たり前に横行する社会の中で、弱者が自分を守るためにできることは、自分自身が加害者になることだ。学校の現場でも、自分の身を守ろうと必死に生きるこどもが、意に反していじめの加害者側に取り込まれかねない危険がある。大人たちも同じだ。家庭で、仕事の現場で、被害者にならないためにできる選択肢は2つだ。その場から離れるか、黙すことで加害に加担するか……



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ジェーン(ジュリア・ガーナー)は、名門大学出身。映画プロデューサーを目指し、業界有数のエンタテインメント企業でジュニア・アシスタントとして働いている。何百人もの若者が望む仕事を勝ち取ったジェーンは、地味で面倒な作業をてきぱきとこなし動きも機敏だ。しかし、表情はどこか虚だ。激務ゆえの疲れというより、釈然としない何かを抱えているようにみえる。その釈然としない思いは、ある出来事がきっかけとなり、はっきりした輪郭となっていく。

自分の夢を、人質のように会社に預けなければならない現実。若い女性が掲げる正義のか弱さ……どれだけの人が、ジェーンに共感できてしまうのだろうか。キティ・グリーンが同業界の多くの女性に話を聞きながら少しずつ積み上げた物語は、フィクションという形を借りているけれど、限りなくノンフィクションに近い。わずか18日で撮影された87分、私がそこから感じるのは、怒りと、それ以上の悲しみだ。娘の体を気遣う両親の存在があることに救われると同時に、娘の仕事を誇らしく思う気持ちが痛々しい。大切な家族だからこそ、言えないことがある。

 

 

<本ブログ内リンク>

 

『母の聖戦』

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2023/01/la-civil.html



<公式サイト>


アシスタント

https://senlisfilms.jp/assistant/


配給・宣伝:サンリスフィルム

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