2018年6月18日月曜日

『告白小説、その結末』(D'après une histoire vraie)

 主人公のデルフィーヌが回転木馬のすみのベンチに座り、スマホでこどもと話しているシーンが、なぜか印象に残っています。

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『告白小説、その結末』(原題:D'après une histoire vraie)
  
 ライターズ・ブロック。
 物を書くことを生業にする人にとって、これほど恐ろしい言葉があるだろうか。
 書けない、筆が進まない。
 目の前には真っ白な紙。
 あるいは空虚なコンピューター画面。

 人気小説家、デルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)もまた、その状態にいる。
 次回作を期待される人気作家は、読者からの期待とアイデアが枯渇するスランプ状態のはざまで、苦しみに苦しみを重ねる。大ヒットとなったのは、母親との関係を綴った私小説。自分の成功のために家族を売ったのではと、デルフィーヌは自責の念をかくせない。そんな彼女を見透かすように、バッシングの手紙を郵送する読者もいれば、SNSで自分の名を名乗る複数のアカウント上で炎上が。そんな中、デルフィーヌは、「あなたのファン」と名乗る、頼もしい友人と出会う。彼女の名は”ELLE”、エル(エヴァ・グリーン)。職業は、ゴーストライター。


©2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma,
 Monolith Films. All Rights Reserved.


 講演の依頼や友人からのメールの返信。ラジオのインタビュー……デルフィーヌの貴重な創作の時間は、日々の「業務」で奪われている。それらを友人となったエルが、デルフィーヌの代わりとなり、てきぱきとさばいていく。

 デルフィーヌを操り、エルはいつしか人気作家の座を奪うつもりなのだろうか?いや、エル以上にしたたかなのは、むしろデルフィーヌではないのか?

 監督は「女性同士の対立を描くのは、この映画は初めて」と語る、ロマン・ポランスキー。脚本に名を連ねるのは、「パーソナル・ショッパー」が記憶に新しいオリヴィエ・アサイヤス。
 スタッフも貫禄十分だが、2人の女優の競演がもう、すごいのひとこと。
 デルフィーヌの役をエヴァ・グリーンが、エルをエマニュエル・セニエが演じたらそれもまた面白そうだなと、想像をめぐらせるとわくわくしてくる。


©2017 WY Productions, RP Productions, Mars Films, France 2 Cinéma,
 Monolith Films. All Rights Reserved.


<本ブログ内リンク>

オリヴィエ・アサイヤス監督作品
『パーソナル・ショッパー』

<公式サイト>
『告白小説、その結末』



6.23(土)、ヒューマントラストシネマ有楽町・
YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー




原作:デルフィーヌ・ド・ヴィガン「デルフィーヌの友情」(水声社)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:エマニュエル・セニエ  エヴァ・グリーン
脚本:オリヴィエ・アサイヤス  ロマン・ポランスキー

原題:D'après une histoire vraie/英題:Based on a true story/2017年/フランス・ベルギー・ポーランド/フランス語/100分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:古田由紀子  
配給:キノフィルムズ/木下グループ 

2018年6月16日土曜日

『それから』 (The Day After)

 南北首脳会談、米朝首脳会談と、朝鮮半島は今、世界史の教科書に乗りそうな転換期を迎えているようです。
 そんな中、韓国のホン・サンス監督の映画の上映が日本で始まりました。
『それから』、『夜の浜辺でひとり』、『正しい日 間違えた日』、主演はすべてキム・ミニ。
そして、7月14日にはキム・ミニがイザベル・ユペールと共演した『クレアのカメラ』の上映も始まります。

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『それから』 (The Day After)

 それから…… 
 なんて詩的な響き!
 夏目漱石が小説のタイトルに使ったこの言葉は、妖精が媚薬をふりまいたかのような艶っぽさに溢れている。
 ホン・サンス監督の映画「それから」は、私たちの日常に溢れている光景だ。なのに「陳腐」ではなくて新鮮。「平凡」ではなくてきらきらしている。主演のキム・ミニは、道化と隠者をあっさりと、そしてしみじみと演じる。
 モノトーンの映像が香しく、ノスタルジックな雰囲気がいっぱいに漂う。


© 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
 
 韓国映画の豊かさを満喫しながら、韓国のことを考えた。

 今から38年前の1980年。
 ちょうど、クロード・ピノトー監督の『ラ・ブーム』が本国のフランスで公開された頃だろうか。ウォークマンのシーンが話題になり、ソフィー・マルソーが世界中で大ブレイク。日本では竹の子族だのハマトラだのという言葉が闊歩していた。そんな頃、韓国では「光州事件」が起き、多くの命が無惨に失われていた。
 そんな韓国が「民主化宣言」の発表にたどりついたのが、1987年。日本がバブル景気でうきうきし始めた頃、韓国はようやく長く暗いトンネルを抜け、光を見た。

 そして今はどうだろう。
 韓国の文化はものすごいスピードで世界を駆け抜け、確固たる地位を築いた。日本にも才能溢れる映画人がいるのだけれど、それでも、この映画を観ていると、「かなわないなあ」と感じてしまう何かがある。日本に住む私たちに足りない何かが。
 この映画がこんなに美しく、こんなにも愛おしい理由。
 それはきっと、韓国の人たちが「自由」を自分たちの力で勝ち取ったからじゃないだろうか。自由を勝ち取った人たちの間で育ったから、ホン・サンス監督は、こんなにもさりげなく、人生を愛おしむ映画を撮ってしまうことができるんじゃないだろうか。
 そんなことを思った。

 劇中で夏目漱石の本をちゃんと登場させるところも、すてき。


© 2017 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.
 


<公式サイト>
 
『それから』


監督・脚本:ホン・サンス
2017年/韓国/91分/モノクロ/ビスタ 原題:그 후 英題:The Day After 
配給:クレストインターナショナル


6月9日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて全国順次ロードショー

2018年6月11日月曜日

『オンネリとアンネリのおうち』(Onneli ja Anneli)

 いくら親子とはいえ、世代が違えば、育つ環境も違う。自分たちのこども時代と同じ感覚で接していると、さまざまな食い違いが……
 いやいや、そんなことはないのです。
 どんなに時代が変わろうと、ものすごいスピードでテクノロジーが進歩しようと、こどもはいつだって好奇心が旺盛で、愛し愛されることを求めているのです。それだけは変わりません。あなたがこどもだった頃と同じように。

 もし、こどもとのコミュニケーションに自信をなくしてしまったら、親子で映画館へ出かけてみませんか? 観賞後の感想を話し合うとか、そんな気難しいことを考えなくてもよいのです。ほんのひととき、親子が同じ場所に視線を向けるということ、同じ物語を共有するということ、それこそが大事なことではないでしょうか。

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親子で映画館へ

『オンネリとアンネリのおうち』(原題:Onneli ja Anneli)


© Zodiak Finland Oy 2014. All rights reserved.



 Kiitos !(キィトス)
 
 フィンランド語で「ありがとう」という意味。
 この響きの何と心地よいこと。

 離婚した両親のもとを行ったり来たりのアンネリと、9人兄弟の真ん中で孤立するオンネリ。幼児でもない、ティーンエイジャーでもない、微妙なお年頃をふわりふわりと漂う2人。まるでハンモックに揺られるように。
 そんな2人が思わぬ幸運を手にする。なぜって、2人は「正直者」だから。
 北欧の鮮やかな色彩、バラの香りがいっぱいに漂う庭、ゆったりと、のんびりと流れる時間…… 暗い箱の中で、観ている私たちは素敵な魔法をかけられる。

 世界中のこどもたちのために、私たち大人にできることは何か? 
 それが何なのか、映画は気づかせてくれます。


© Zodiak Finland Oy 2014. All rights reserved. 


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船戸結愛ちゃんが、天国で素敵な夏休みを過ごせますように。
いっぱいの愛に包まれますように。


<本ブログ内リンク>

親子で観たい映画の数々……

『リュミエール!』(Lumière ! )  その1


『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle)


E.T.


ドラえもん『ぼく、桃太郎のなんなのさ』

<公式サイト>
『オンネリとアンネリのおうち』 


6月9日(土)、YEBISU GARDEN CINEMAほか
全国ロードショー
配給:アット エンタテインメント