『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その3
スタンダール作品を演じる女優たち
© 1947 SND (Groupe M6) – DISCINA
今回の映画祭で上映されるスタンダール原作の2作、『パルムの僧院』(Le Chatreuse de Parme)と『赤と黒』(Le Rouge et le Noir)。ジェラール・フィリップ演じる主人公はもちろんだが、共演する女優たちにも注目したい。
『パルムの僧院』で、サンセヴェリナ公爵夫人を演じるマリア・カザレス(Maria Casares)。ファブリス(ジェラール・フィリップ)を守るために彼女は選びたくなかった方法を選択する。少し下に目線を向けたときの表情、憂いを含んだ微笑み……艶やかな美しさは幸福とは遠いところにあるのだろうか。本作より少し前に製作された『天井桟敷の人々』 (Les enfants du Paradis)でも、マリア・カザレス演じる女性は、求める人からの愛を得ることができず苦しんでいたことを思い出す。
©1954 Gaumont - Documento Films
『赤と黒』では、ジュリヤン(ジェラール・フィリップ)と恋に落ちるレナル夫人を演じたダニエル・ダリュー(Danielle Darrieux)。ためらいながらも、恋しくてたまらなくなって、靴音を立てないように裸足になってジュリヤンの部屋まで向かう仕草。ドアの前でそのドアを叩くことも開けることもできないでいる恥じらい、”嫉妬”という感情にもて遊ばれる迷いと苦しみ……『パルムの僧院』のモノクロの映像では、登場人物たちの”表情”が印象的だが、『赤と黒』では、色彩豊かな映像の中で見る彼らの”動き”が余韻を残す。
そして、2作に共通するのが、もう1人の女優だ。『パルムの僧院』のマリア・カザレスを”漆黒の宝石”と表現するなら、クレリアを演じるルネ・フォールは”純白の花“だ。『赤と黒』では、侯爵の令嬢マチルドを演じるアントネッラ・ドゥアルディは、清楚で従順なレナル夫人とは対照的、奔放で気丈な魅力を放つ。
フランス文学に造形が深く、映画への物足りなさを感じる人も少なくないかもしれない。そうであったとしても、賛否両論、多くを語り、議論できることそのものが、幸せな営みではないだろうか。原作の素晴らしさ、映画の素晴らしさ(あるいは物足りなさかもしれない)、そして俳優たちの美しさに満たされながら、あたたかな冬を過ごしたいと思う。
<本ブログ内リンク>
『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その1
いい夫婦の日に寄す
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1001-gerard-philipe-100ans.html
『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』その2
罪を犯す若者たち、その後ろ姿…
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2022/11/1002.html
<公式サイト>
『ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭』
http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/
『パルムの僧院』と『赤と黒』は、2K デジタル・リマスター版が上映されます。
配給:セテラ・インターナショナル
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