『ピエール・エテックス レトロスペク ティブ』
© 1965 - CAPAC
パリの郊外だろうか。団地から1人の若い女性が自転車で会社へと向かう。自動車が行き交う道路を颯爽と、風を切って走る。バックに流れる音楽が、サーカスが始まる直前のワクワク感を感じさせてくれる……カラー長編『大恋愛』の1シーンだ。ほんの少し登場する本当にさりげないシーンだけれど、ピエール・エテックスのきらきらした感性は、こんな細部に宿るのだと感じる。
第一次世界大戦から戻り結婚し、10年経った頃。仕事も妻との生活も充実しているが、どこか満たされない。さまざまな人がさまざまな妄想をくり広げ、映画はコミカルに展開していく。シングルベッドが車のように道路を走り出す妄想シーンは、一人ひとりの人生や人間模様を象徴するかのよう。『大恋愛』上映時には、短編『幸福な結婚記念日』が併映される。恋する女性を思うとき、ピエール・エテックス演じる主人公は最も輝きを放つような気がする。
モノクロ長編『ヨーヨー』もまた、主人公が1人の女性への思慕を募らせるシーンから始まる映画だ。彼の一途なまなざしに、道化師(クラウン)の哀愁が重なる。
© 1965 - CAPAC
<本ブログ内リンク>
この映画の助監督となったことが、エテックスの映画進出へのきっかけとなりました。
『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle) --Monsieur Hulot と寅次郎--
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2016/09/mon-oncle-monsieur-hulot.html
この映画のイオセリアーニ監督も、ピエール・エテックスに賛辞を送っていました。
『皆さま、ごきげんよう』
https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2016/12/chant-dhiver.html
<公式サイト>
『ピエール・エテックス レトロスペクティブ』
http://www.zaziefilms.com/etaix/
配給:ザジフィルムズ
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