2022年12月30日金曜日

『ピエール・エテックス レトロスペク ティブ』(Pierre Étaix)

『ピエール・エテックス レトロスペク ティブ』

                   © 1965 - CAPAC


 

 パリの郊外だろうか。団地から1人の若い女性が自転車で会社へと向かう。自動車が行き交う道路を颯爽と、風を切って走る。バックに流れる音楽が、サーカスが始まる直前のワクワク感を感じさせてくれる……カラー長編『大恋愛』の1シーンだ。ほんの少し登場する本当にさりげないシーンだけれど、ピエール・エテックスのきらきらした感性は、こんな細部に宿るのだと感じる。

 第一次世界大戦から戻り結婚し、10年経った頃。仕事も妻との生活も充実しているが、どこか満たされない。さまざまな人がさまざまな妄想をくり広げ、映画はコミカルに展開していく。シングルベッドが車のように道路を走り出す妄想シーンは、一人ひとりの人生や人間模様を象徴するかのよう。『大恋愛』上映時には、短編『幸福な結婚記念日』が併映される。恋する女性を思うとき、ピエール・エテックス演じる主人公は最も輝きを放つような気がする。

モノクロ長編『ヨーヨー』もまた、主人公が1人の女性への思慕を募らせるシーンから始まる映画だ。彼の一途なまなざしに、道化師(クラウン)の哀愁が重なる。



                   © 1965 - CAPAC




 

<本ブログ内リンク>

 

この映画の助監督となったことが、エテックスの映画進出へのきっかけとなりました。

『ぼくの伯父さん』(Mon Oncle) --Monsieur Hulot と寅次郎--

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2016/09/mon-oncle-monsieur-hulot.html

 

 

この映画のイオセリアーニ監督も、ピエール・エテックスに賛辞を送っていました。

『皆さま、ごきげんよう』

https://filmsandmusiconmymind.blogspot.com/2016/12/chant-dhiver.html

 

 

<公式サイト>

『ピエール・エテックス レトロスペクティブ』
http://www.zaziefilms.com/etaix/

配給:ザジフィルムズ

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