2016年6月22日水曜日

『間奏曲はパリで』(原題:La Ritournelle) 〜フランス映画祭2014上映作品〜

フランス映画祭2016が始まります。624日、東京・有楽町朝日ホールで開催されるオープニング・セレモニーでは、団長として女優のイザベル・ユペールさんが登壇。ほっそりしたあごのラインと切れ長の口元が何てキュートなんだろうと、この映画をうっとりと観ていたのを思い出します。

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『間奏曲はパリで』(原題:La Ritournelle) 
〜フランス映画祭2014上映作品〜

 熟年夫婦の倦怠や戸惑い……犬も食わないような何てことのない日常。それを、この監督はなんて優雅に、なんて愛おしく描いてしまうんだろう。
 フランス映画祭2014で来日したときも、マルク・フィトゥシ(Marc FITOUSSI)監督は、ファンに優しく穏やかな視線を向けていたのが印象的だった。
 記者会見でも、こんなコメントとともに、映画への思いを発言していた。
「私はあえて暴力を映画の中に出していません。むしろ、争うことをせず、人の心にある優しさを活かすことで物事は解決できるというメッセージを映画にこめています」と。




マルク・フィトゥシ(Marc FITOUSSI)監督
(2014629日有楽町朝日ホールにて撮影)

  主人公のブリジットを演じるのは、還暦を迎えなお美しいイザベル・ユペール。そして、夫・グザヴィエを演じるのが、ジャン=ピエール・ダルッサンだ。
「ブリジットは、他の人とは違っていた。個性的で、意志が強かった」。農業高校で一緒だった頃の彼女のことを、グザヴィエはこんな風に自慢する。そして、「将来、何になりたいか」という先生の問いに「羊飼い」と答えた彼女を見て、一生添い遂げたいと心から感じたと。
 こどもたちが巣立った後も、こんなことを言ってくれる夫を持つ女性の、なんてうらやましいこと!それでも、変わらない日常に反比例するかのように、自分の体が衰えつつあることにブリジットは不安を感じていたのだろう。すきま風の吹く心を持て余しながら、パリへと向かう。
 
 物語はブリジットを中心に展開していくが、彼女のパリ行きに疑念を抱き、パリで放浪するグザヴィエのシーンが印象的だ。

 サーカス修行に励む息子を訪ね、彼の練習をじっとみつめる。息子に短い励ましを与えて去るシーン。

 オルセー美術館を漂い、羊飼いが描かれた作品の前で物思いにふけるシーン。(※)
 
 英語版の“The Good Life”(良き人生)が、映像とあいまって切なくなる。
 
 初めてこの映画を観たときは、ブリジットに感情移入して見ていたけれど、2回めはなぜか、グザヴィエから目を離すことができなかった。

 フィトゥシ監督の優しさは、さりげなく登場する脇役へのまなざしにもあらわれている。パリでアボカドや花を売る青年・アプーの存在も忘れずに最後まで見ていてほしい。

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   羊飼いの絵のタイトルは、”Le retour du troupeau”。アメリカの画家、Charles Sprague Pearceによる作品です。(プレランクール城仏米会館美術館所蔵)

※この映画がフランス映画祭で上映された629日は、『星の王子さま』の作者、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine de Saint-Exupéry)の誕生日でした。
彼が残した言葉と、この映画が重なりました。
“Aimer, ce n'est point nous regarder l'un l'autre,mais regarder ensemble dans la meme direction.”
愛とは、お互いを見つめ合うことではなく、同じ方向を向いて生きること。


<本ブログ内リンク>

フランス映画祭2016が始まる
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016_22.html


再)わたしはロランス(フランス映画祭2013上映作品)
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2013.html

ショートフィルムの日、そして『フランス映画祭 2016〜短編作品集』
http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2016/06/2016.html


<公式サイト>

フランス映画祭2016
http://unifrance.jp/festival/2016/

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