2017年6月1日木曜日

『ザ・ダンサー』(原題:La Danseuse)

カンヌ映画祭が終わりました。
梅雨が中盤にさしかかる頃、日本では『フランス映画祭2017』が始まり、フランスからカトリーヌ・ドヌーヴをはじめ、多くの映画関係者が来日します。
横浜でも、横浜フランス月間のイベントが、日本各地で『フェット・ドゥ・ラ・ミュージック』(音楽の祭り)が開催されます。「あじさいの色」はもしかすると「フランスの色」なのかもしれません。

そんなフランスの「ベル・エポック」を描いた映画の上映が始まります。

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『ザ・ダンサー』(原題:La Danseuse)



© 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR - WILD BUNCH - ORANGE STUDIO -
 LES FILMS DU FLEUVE - SIRENA FILM
 
 時は19世紀。奔放な父親と2人で田舎暮らしをしていたマリー=ルイーズ(ソーコ)は、父の死をきっかけに、ニューヨークの母の元へ身を寄せる。女優に憧れ、写真のモデルや芝居の脇役を健気に演じる彼女に、あるとき幸運の女神が微笑む。観客席から喝采を浴びたマリー=ルイーズは、ロイ・フラーという芸名をたずさえ、新しい芸術に挑み始める。振り付け、衣装、照明—— ロイのビジョンは「女優」という枠をどんどん超え、その活躍の場はニューヨークからパリへと移っていく。モデルとなった人物は、ベル・エポックのパリに熱狂を巻き起こし、マネの絵『フォリー・ベルジェール』でも知られる、モダン・ダンスの先駆者、ロイ・フラー。照明の色や角度にこだわり、シルクの衣装が暗闇の咲く花のように美しく見えるよう、自らに過酷な動きを課した人だ。彼女の舞台裏を、写真家出身のステファニー・ディ・ジュースト監督は、美化することなく、克明に描いた。華麗な舞台の最中に聞こえるロイの激しい息づかい、あざだらけの肩、過剰なほどの劣等感……映画の後半から登場するイサドラ・ダンカン(リリー=ローズ・デップ)との対比は痛ましいほど。そんな「自信のない成功者」だからこそ、彼女を支えるガブリエル(メラニー・ティエリー)や、マルシャン(フランソワ・ダミアン)らの存在感が大きく感じられる。ロイを愛し、傷ついていくルイ・ドルセー伯爵(ギャスパー・ウリエル)の繊細な心の動きが、なんとも切ない。

日本に住む私たちに興味深いシーンも。ロイ・フラーが、日本舞踊の美しさにいちはやく注目し、川上貞奴らを支持するも、周りの人々は日本舞踊を芸術として評価しようとはしない。そのことが皮肉にも、イサドラ・ダンカンの飛躍へとつながっていく……ダンサーをはじめ、アートを追求するすべての人たちに捧げたくなる映画。




 © 2016 LES PRODUCTIONS DU TRESOR - WILD BUNCH - ORANGE STUDIO -
 LES FILMS DU FLEUVE - SIRENA FILM


<本ブログ内リンク>

ロイ・フラーの恋人を演じる、ギャスパー・ウリエル主演の映画
『たかが世界の終わり』 (Juste la fin du monde

バレエに挑む、少年たちのドキュメンタリー
『バレエボーイズ』(Ballettguttene



<公式サイト>

ザ・ダンサー

監督: ステファニー・ディ・ジュースト
脚本: ステファニー・ディ・ジュースト  サラ・ティボー  トマ・ビドガン
製作: アラン・アタル
撮影: ブノワ・ドビー
美術: カルロス・コンティ
衣装 アナイス・ロマン
出演: ソーコ  ギャスパー・ウリエル  リリー=ローズ・デップ  メラニー・ティエリー フランソワ・ダミアン  
  ほか

2016/原題: La danseuse/フランス・ベルギー/ 108/PG12

配給: コムストック・グループ






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