2016年2月16日火曜日

『ザ・テノール〜真実の物語〜』(The Tenor Lirico Spinto)

NHK連続テレビ小説『あさが来た』で、オペラの楽曲をアカペラで歌う青年が……
この映画でも流れていたのを思い出しました。
上映スケジュールが随時更新されていますので、お近くで上映されるようでしたらぜひ。

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『ザ・テノール〜真実の物語〜』(原題:The Tenor Lirico Spinto/2014/日韓合作)


 韓国出身のテノール歌手、ベー・チェチョル(ユ・ジテ)が、彼を招聘した音楽プロデューサーの沢田幸司(伊勢谷友介)に向かって尋ねる。なぜ、この仕事を始めたのか、と。沢田は答える。死にたいと思うほどつらかったこども時代、音楽を聴くことで自分の心を癒していたと。

The music save a young boy’s life.”
(音楽がひとりの少年の命を救ったんだね)

 チェチョルは沢田をみつめ、優しく微笑む。バックでは、沢田のアシスタントの美咲(北乃きい)が、”LASCIA CH'IO PIANGA”(私を泣かせてください 歌劇『リナルド』より)をギターの弾き語りで歌っている。

 リリコ・スピント(Lirico Spinto)と呼ばれる類いまれな声質で世界的なオペラ歌手としての名声をほしいままにしていたチェチョルを、病魔が襲う。甲状腺がんだ。手術によって命を取り留めたが、その代償は大きかった。歌だけでなく、日常会話すらままならない状況となった彼を支えたのが、彼の家族であり、親友の沢田たちであった。周囲の人々の尽力によって、彼は心を取り戻し、声を取り戻す。そして、再び舞台に立てるようになるのだ。
 
 チェチョルと「日本」には深いつながりがある。彼のご尊父は大阪で生まれ、彼の舞台復帰に尽力したのは日本の沢田たちであり、彼の声を回復するための手術を行ったのが、声帯回復手術においての世界第一人者である、一色信彦医師だ。
 
 映画では、それぞれの登場人物に深いドラマがあり、誰もが主人公になり得る魅力がある。チェチョルを支える妻ユニ(チャ・イェリョン)が、終盤で「敵に塩を送る」かのように発する言葉に、夫や音楽への愛を感じるし、一見オペラの世界にはそぐわないと思えそうな美咲(北乃きい)をすぐに採用してしまう沢田に、懐の大きさを感じる。

 そしてこの映画に実名で登場した、一色信彦先生。既に揺るがない名声を持つ世界的医師が、大きなリスクを抱えながらも手術に挑む姿……そこからも、深いドラマが生まれそうだ。

 チェチョルが再び舞台に立ったとき、彼が観客の前で歌ったのは、”アメイジング・グレイス(Amazing Grace)”だ。クリスチャンであるチェチョルを支えたのは、家族や親友たちであるとともに、彼自身の”信仰”であった。

<公式サイト>

『ザ・テノール〜真実の物語〜』

 http://the-tenor.com

  公式サイトには、ベー・チェチョルさんご本人のインタビューの動画が掲載されています。美しいイタリア語でこたえるチェチョルさんの"Poco a poco"(ポコアポコ 少しずつ)という言葉の響きが印象的。

ヴォイス・ファクトリイ株式会社
http://voicefactory.jp

  ヴォイス・ファクトリイは、伊勢谷友介さんが演じた「沢田幸司」のモデルとなった、輪嶋東太郎(わじまとうたろう)さんによる会社です。


京都ボイスセンター
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/isshiki/isshiki-profile.html

  一色信彦先生が、院長をつとめていたクリニックです。
(現在はクローズ中ですが、サイト上にて診察できるクリニックが紹介されています)

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