2015年7月6日月曜日

映画監督たちは、暴力の描写とどう向き合っているのか(フランス映画祭2014)

『フランス映画祭』2015が、626日〜629日の4日間、東京で開催されました。
本来ならこのときのレポートを発表すべきタイミングなのですが、今回はあえて昨年のフランス映画祭2014についてふれたいと思います。このとき来日したトニー・ガトリフ団長をはじめ、4人の映画監督が語ってくれた言葉が、今になってよみがえったからです。
元少年Aによる『絶歌』出版が、社会問題となっています。
表現の自由とは何なのでしょうか? その自由を守るためには、どんな責任が伴うのでしょうか?
自由と平等の国、フランスからやってきた表現者たちが真摯に語ってくれた言葉が、1年たった今、さらに重みを増して私の心に響いています。

あなたはどう考えるでしょうか?

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−映画監督たちは、暴力の描写とどう向き合っているのか—

 東京・有楽町朝日ホールで、フランス映画祭2014のオープニングセレモニーが行われ、多くの観客でにぎわった。 
 直前に行われた記者会見には、ユニフランス代表・イザベル・ジョルダーノさんと4人の監督が、報道陣の質問に答えた。(ジャン=ポール・サロメ監督は、ユニフランス会長でもある)。

 暴力や戦争のシーンを描くことに関して、4人の監督たちは、どのように描くべき、あるいはどのように描かないべきか、それぞれの視点から語る。
 本映画祭の団長でもある、『ジェロニモ―愛と灼熱のリズム』のトニー・ガトリフ監督。
「暴力のシーンは映像の中で、ときに美しくみえてしまうことがあります。しかしそう思わせてはならない」。


『2つの秋、3つの冬』のベベデール監督。
「私の映画で暴力が連想されるのは、ナイフが出てくる一瞬のシーンだけです」と語る
「本当の戦争ではありませんが、30代の若者たちが経済戦争をいかに闘うか、そんな小さなレジスタンスを、映画をとおして訴えています」

『間奏曲はパリで』のマルク・フィトゥシ監督。
「私はあえて暴力を映画の中に出していません。紛争の前に、人の優しさで物事は解決できる、映画ではそんなことを伝えています」

そして、『俳優探偵ジャン』のジャン=ポール・サロメ監督は、自身がかつて第二次世界大戦の拷問のシーンを撮影したときのことを振り返る。
「難しいシーンだったため、資料を調べ、歴史の専門家にアドバイスを求め、慎重につくりあげたそのシーン。後で「あの拷問のシーンは長すぎて、耐えられなかった」という感想を聞いたとき、「よかった」と思ったそうだ。
「実際の拷問シーンはもっと長く、もっとつらかったのですから、映画としてはよい結果だったと思います」。それでも、露骨に描くことは避けた。「映像をすべて見せずにく、音だけで表現するという方法をとりました」。そのことがかえって観客の想像力をふくらませ、より恐いシーンとなったのかもしれない。

「暴力は、インターネット上にあふれている」と、現状を嘆くガトリフ監督。だからこそ「映画は、人間性を高めるために存在するのです」と結ぶ言葉が力強く、輝いていた。


(写真左から)
ジャン=ポール・サロメ監督(ユニフランス会長)
トニー・ガトリフ監督(フランス映画祭2014団長)
イザベル・ジョルダーノさん(ユニフランス代表)
セバスチャン・ベベデール監督
マルク・フィトゥシ監督


<本ブログ内リンク>

フランス映画祭2015 その1 『エール!』トークショー


http://filmsandmusiconmymind.blogspot.jp/2015/06/2015.html

<公式サイト>

フランス映画祭2014
http://unifrance.jp/festival/2014/


フランス映画祭2015
http://unifrance.jp/festival/2015/ 

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