2015年7月9日木曜日

『ソロモンの偽証』(前篇・事件 後篇・裁判)その2

岩手県矢巾町(やはば)町で起きた、中学生の自殺の報道を受け、過去に執筆した記事を改稿・再掲載します。
映画の上映は終わりましたが、2015年8月19日にはBlue-ray(ブルーレイ)とDVDが発売されます。

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『ソロモンの偽証』(前篇・事件 後篇・裁判)その2
 (2015/日本/ 原作:宮部みゆき/ 監督:成島出)

〜高校生たちが取り組む「模擬裁判」〜 

「本当のことを知りたいって、そんなにいけないことなの!?」

 同級生の死、その真実を知りたいと願うのは、映画の主人公・藤野涼子。彼女の声が、多くの人の共感を呼び、残暑厳しい夏休みの中学校での「校内裁判」が実現する。
「(彼女は)なんで同級生が死ななくちゃならなかったのか、必死でみつけようとしてんだよ。たのむからやらせてやってよ」。保護者のひとりがうったえる。

 つい先日まで上映されていた『ソロモンの偽証 後篇・裁判』では、その校内裁判での人間模様が描かれる。
 
 これだけの正義感、これだけの実行力、彼女たちは、なぜこんなに強く純粋でいられるのだろう。
 
 嬉しかったのは、映画や小説だけではなく、現実の世界にも、同じようなこどもたちが実在していることだ。

 201546日、月曜日。
 春休みが終わったばかりの高校の一角で、その模擬裁判は行われた。
 タイトルは、『ソロモンの偽証 春休み特別講座』。



 模擬裁判の様子/  2015年4月6日撮影

 東京・早稲田大学高等学院の高校生約10名によって構成される「模擬裁判プロジェクト」のメンバーが、映画で主人公を演じた藤野涼子さんを裁判員として迎え、用意された事件の判決を出すという企画だ。藤野さんは、自身の芸名を主人公と同じ「藤野涼子」とするほどに、本作への思いは強い。少し先輩である高校生たちに囲まれながらも、物怖じすることのなく評議を行っていた。
 題材となったのは、「イジメリベンジ殺人事件」。所属する野球部の先輩たちからのいじめに耐えかねて、主犯格の少年を死に追いやってしまう、という事件だ。

 開廷の直後は、形式的な展開にふりまわされがちな雰囲気が感じられた。が、時間が進むにつれその堅苦しさがほぐれていく。慎重に言葉を選びながらも、高校生たちの議論は途絶えることなく続いた。



模擬裁判に参加する藤野涼子さん
2015年4月6日撮影


「殺したという結果だけをみれば厳罰、でも……」
 
「生活の場が(自分たちとは違い)自宅ではなく寮だった。周りの環境は劣悪だったのではないか」

「助けられる周りの人たちがいれば、起こらなかった事件ではないか」

「野球部の顧問と上級生が取るべき責任を明記すべきだ」

「いじめを止められない周りも同罪だ、いやそれより重いかもしれない」

「こどもは親を心配させたくないもの、自分のプライドも許さないから親には相談しにくい」という発言には、こどもだからこそ知り得る世界を教えてもらった。かと思えば、
高校生は、もはや「こども」ではないなと感じる深い発言もあった。

 彼らの世代が社会の中核を担う頃には、日本社会の閉鎖的な雰囲気が少しだけ変わっているかもしれない。そのことを希望に思い、先輩である自分たちに何ができるのか、今一度考えたい。

               2015年4月6日撮影


本ブログ内リンク>

『ソロモンの偽証』(前篇・事件 後篇・裁判)その1


『バベルの学校』その2 吹き替えに挑む川崎の中学生


<公式サイト>

『ソロモンの偽証』

http://solomon-movie.jp

配給:松竹

作品名:『ソロモンの偽証 前篇・事件』『ソロモンの偽証 後篇・裁判』

原作:宮部みゆき(新潮文庫刊)/監督:成島出 

主題歌:U2「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」

出演:藤野涼子 板垣瑞生 石井杏奈 清水尋也 富田望生 前田航基 望月歩


佐々木蔵之介 夏川結衣 永作博美 小日向文世 黒木華 尾野真千子

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