米国の旅行雑誌の「世界の魅力的な観光地」のランキングで、”Kyoto “(京都)が2年連続で1位に選ばれました。
古き時代の日本は、海外の人たちをどのように魅了しているのでしょうか。
この人が与えた影響も、きっと大きいに違いないのです。
7月12日は、鈴木大拙の命日。彼を描いたドキュメンタリー映画をご紹介します。
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『A ZEN LIFE』(筆者訳:"禅 ZEN "という生き方)
京都の龍安寺で、米国から訪れた初老の男性と出会った。
「日本はどうですか?」と聞くと、こんな答えが。
「とてもpeaceful(穏やか)な気持ちになりました」
「ZEN(禅)」の精神を知りたくて、大陸から東の果ての島国を訪れた彼は、静かで、そして晴れやかな表情をしていた。
日本に憧れ、日本を訪れる人は決して少なくはない。日本の魅力に惹かれ、そのまま日本に定住する外国人も少なくない。彼らを惹きつけてやまないものはさまざまだろうが、「ZEN(禅)」も、その中の1つであることは間違いない。"ZEN"という言葉は外国語でも使われる。フランス語では、慌てている人に「落ち着いて」というときに"ZEN"という単語を使うことがある。 合理主義の限界に気づき、迷う欧米の人たちにとって、"ZEN"は、「蜘蛛の糸」のような存在なのかもしれない。
"ZEN"を海外に広めた立役者として忘れてはならない人物がいる。鈴木大拙(D. T. Suzuki)だ。ZEN(禅)を知りたいと願う欧米の人々に、わかりやすい解説を英語で行った。完璧な人間が存在しないように、鈴木大拙もまた、一部の人々から批判を受けた。
「それでも、彼は、ある時期、欧米の人たちにとって、とても大切な存在だったのです」と語る、マイケル・ゴールドバーグ(Michael Goldberg)さん。
Michael Goldbergさん(2014年6月7日撮影)
マイケルさんは、カナダ・ケベック州出身の映像作家(Videographer)。明瞭でユーモアまじりの日本語に、日本での活動の長さが感じ取れる。彼もまた、鈴木大拙の偉大さを知る1人だ。自力で資金を集め、多くの協力者を得て、1本のドキュメンタリーを撮った。
それが、『A ZEN LIFE』だ。
2006年、カナダ大使館のオスカー・ピーターソンシアターで上映されたとき、予想を上回る観客が押し寄せたため、急きょ追加上映を行うほどの人気であった。本作は、英語のナレーションと字幕で構成されるが、このときの上映には日本語字幕がつけられていた。LSDと禅との類似性に興味を示した大拙が「自分もLSDを試してみたい」と発言して周りから止められたエピソードでは、場内に笑いがあふれた。鈴木大拙という人物のお茶目な一面をとらえたマイケルさんもまた、茶目っ気あふれる映像作家だ。
『A ZEN LIFE』は、現在、インターネット上でDVDの入手が可能。DVDに日本語の字幕はないが、ピーター・バラカン氏(Peter Barakan)らの英語ナレーションは明瞭で聞き取りやすい。禅をまったく知らない人たちに向けて製作されているので、むしろ、理解しやすいかもしれない。かつて、欧米の人たちが求めた「蜘蛛の糸」。そして今、日本に住む私たちがその糸を求めているのかもしれない。
『A ZEN LIFE』公式サイト(英語)
http://www.azenlife-film.org/
『A ZEN LIFE』プロジェクトページ(日本語)
http://www.azenlife-film.org/top_j.htm
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