2015年7月8日水曜日

『イタリアは呼んでいる』(The Trip To Italy)

人間は何て弱くて愛を必要とする生き物なのだろう、とニュースを耳にするたびに思います。
新幹線の車内で、大分の一軒家で…… 
どんなに自分が無力でも、どんなに自分がさびしくても、他者を巻き込んではいけないはずなのに。

こんなときだから、21世紀のヨーロッパにタイムスリップした弥次さんと喜多さんのような、この映画にほっとするのかもしれません。

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『イタリアは呼んでいる』(原題:The Trip To Italy /2014年英)

 ずっと昔、『旅情』(原題:Summertime/1955年米/ 監督:デイヴィッド・リーン)を観た。「若い」なんて言葉に何の興味も示さなかった頃のことだ。名作と聞き、キャサリン・ヘップバーン主演と聞き、どうしても観なければいけない気になって観た。
 婚期を逃したアメリカの独身女性が、1人で憧れのイタリアへと向かい、現地の中年男性と恋に落ちる……自分が何者かもわからず、あり余るエネルギーを持て余しながら自分探しに奔走する若者にとって、「観なければ」という義務感だけで1時間半以上も暗い映画館の中に座るのは、過酷なひとときだった。(もちろん映画に何の罪もない)。
 そして、こうも思った。何十年か経って観ると、また違った感想を持つのかもしれない、と。

『イタリアは呼んでいる』を観て、ふと『旅情』のことを思い出した。
 主人公は、英国の中年男、スティーヴとロブ。美食に舌鼓を打ち、美しい女性に目を肥やし、他愛ない会話に花を咲かせる…… この文面だけ聞くと、つまらない、とてつもなく退屈な映画に思えてくる、という感想をいだく人の方が多いんじゃないだろうか。 



© Trip Films Ltd 2014

 でも、この映画が米国で予想外のロングランになったと聞いたとき、自分がかつて『旅情』に抱いた思いの、その答えがわかったような気がした。

 イタリア…… この国が持つ、とてつもない解放感。さえない男もさえない女も、この国の陽の光に照らされると、たちまちドラマの主人公になれてしまう。ああそうだ、さえないだの、野暮だのという形容詞が存在することすら間違っているんだ。イタリアの青空の下に、そんな言葉は似合わない。
 退屈な日常に埋没しそうな、そんな閉塞感を覚えたら、思い切ってイタリアへ行ってしまってはどうだろうか。当面のお金がない人は、イタリア旅行を目指して貯金を始めてはどうだろう。1日100円、いや50円だっていい。夢があれば、生きていくのも楽しくなるはず。

イタリアを旅する、21世紀の弥次さんと喜多さんに”Bravo” (ブラボー)!

 
© Trip Films Ltd 2014


監督:マイケル・ウィンターボトム 
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン、
ロージー・フェルナー、クレア・キーラン、マルタ・バリオ、ティモシー・リーチ
2014/イギリス/108/ ビスタ 原題:The Trip to Italy
後援:イタリア政府観光局(ENIT)
配給:クレストインターナショナル



© Trip Films Ltd 2014

<公式サイト>

イタリアは呼んでいる
http://www.crest-inter.co.jp/Italy/ 


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